◆◇◆ INDIAN CLASSICAL MUSIC ◆◇◆

           

サンギートとは全インドを通して「音楽」を表す言葉ですが、もともとは声楽や器楽と同時に舞踊や演劇を含んだパフォーミングアートを意味します。

 

インドの古典音楽はヒンドゥー教の前身バラモン教の聖典「ベーダ」の詠唱が、その起源であるといわれています。

そういう意味では、どの文化においても「祈り」が音楽の源であるといえるでしょう。

 

単調な音階からしだいにさまざまなメロディーが花ひらき、数多くの旋律型「ラーガ」群へと、そして単純なビートからめぐるサイクルというアイデアの もとにいろいろなリズム周期「ターラ」群へと、発展していったのがインドの古典音楽です。


北インドの古典音楽はこの「ラーガ」と「ターラ」にもとずいた即興音楽のアートです。

 

この形式の音楽は、ヒンドゥーの寺院や宮廷で、神に捧げるためや、瞑想として、また楽しみのための音楽として成立していました。

そして中世には、イスラム文化の影響をもうけた音楽様式「キャール」が主流となり、現在に至っています。

 

実にさまざまな楽器が使われますが、シタールは旋律用弦楽器、タブラは打楽器の主流です。


西洋や日本の古典音楽ではなにか演奏するにあたってまず「曲」をひとつえらびます。

インドの古典音楽では「ラーガ」をひとつえらびます。

「曲 」と「ラーガ」とは違ったコンセプトです。

 

曲といった場合、それはほぼ作曲されたもので、その通りに演奏していくのが普通です。

それをどうひきこなすのか、そのセンスをとわれる音楽といえるでしょう。

 

これにたいしてラーガの演奏とは、かずかずの約束ごとをもった特定の旋律パターンを即興であらわしていく音楽です。

曲にタイトルがあるようにラーガにもそれぞれ名前がついています。
あるラーガが正しくその約束ごとにのっとって演奏されたとき、そこにはラーガ固有のいろあいがでてきます。

 

北インド古典音楽ではそのいろあいを、どうゆたかに即興的に表現していくかが演奏者の腕のみせどころとなります。

ちなみにラーガという言葉は「心の彩り」と訳されます。

 

伴奏専用の持続音を奏でるタンプーラが醸し出す、瞑想的な雰囲気の中、アラープと呼ばれる旋律のソロ(シタールソロ)からゆったりとはじまり、じょじょに音域が広がってそのラーガが描かれていきます。

しだいに複雑な展開をみせ、やがてリズムをともなった表現(ジョール)へと進行していきます。


このアラープ、ジョールでかなりのもりあがりをみせたのち、ガット(パーカッションとの合奏)へはいっていきます。

 

旋律楽器奏者や声楽家は、バンディッシュと呼ばれるコンポジション、つまり作曲された短いテーマ曲と、その変奏を行っていきます。


ここで登場するのが「ターラ」です。ターラとは周期という概念を基本におくリズムシステムです。

 

このパーカション(タブラ)との合奏で、特に重要なのは周期の1拍目。

ひとつのまとまった即興的展開の最後の音を、第1拍目、またはテーマ曲の冒頭直前で完結する、それはスリリングで、爽快な瞬間です。旋律と太鼓が時にはかけあいも楽しみながら、交互にサイクルを提示していきます。


タブラ伴奏は、単にリズムをキープすることには留まらず、時には複雑なソロパートもとり、それらがお互いのインスピレーションを高めていきます。
演奏がすすむにつれ、スピードがましていき、音の速い反復を中心とする表現(ジャーラー)で、極みに達して演奏が終わります。

 

宮廷音楽、芸術音楽として繁栄した北インド古典音楽ですが、 背景には神秘主義的な思想、哲学があり、究極的には「ナーダ・ブラフマー」(ナーダ=音、ブラフマー=宇宙、神)への探求、つまり音楽を媒体として、より次元の高い神秘性を求めていく、いわばヨーガの一つであるとも言われています。